その4
<その4>
藤の実

馬車モツのおかーさんと北海道の野菜の話をしていたら、
「小さい時にさ、よく藤の実を食べてたのよ。おやつ代わりに。
兄が山ん中に行って採ってきてくれたの。おいしいんだよ。洗って干してから炒って食べるのよ」
藤の実… 北海道ホテルの敷地にたわわに実っていた。
あれね… うまいかもね~
ツラツラ考えていたら、都内某所の屋上に藤棚があって、あそこにあるかも!
あったわ~! 下に落ちていた丸い実を、こっそり戴いてきました!

いや、皮が硬くてびっくりです。
金槌を使って割るくらいの、ちょー硬質の皮で驚きました。
この皮がはじけるときのことを考えると、この植物が種子を如何に遠くに飛ばそうとしているのかが伺え、驚嘆します。

「洗って干しておくの」と言っていたから、そうしました。

多分自然の中では、もっと大きい豊かな実なんでしょうね。
栄養不良のビルの屋上で育ったから小さいんでしょう。

馬車モツに持っていっておかーさんに見せた。
「あらー、藤の実? あ、こんな年取ったのダメよ、もっと若いうちに採らなきゃ!」
(いや~ おかーさん! <年取ったのダメ>なんて、禁句!!)
皮がおっそろしく硬かった、と言ったら
「あの皮、燃やして燃料にする人もいたのよ」とのことである。
せっかく採ってきたんだからと、炒ってもらった。
やたら硬かったけど(年取ってるからさ~)
表面に脂が浮いて
「おいしいよ」という言葉に違和感を感じさせない、香ばしいナッツの味わいが感じられた。

かつてみんな貧しく、食べるものがなかった時代、
しかしそれに反して、なんと豊かで繊細な味覚がはぐくまれていたことか。
この国では。
運賃込み

北海道で買ってきたバターナッツだよ~ん

ふーん、興味なさそうですね…

道産のキャベツ! これならどだ!!

あっ かぶりつきました!

<うめ~~~!! もっと食わせろ>
そうでしょ、春キャベツみたいに柔らかでおいしいでしょ~
あげないよー!!!
1玉130円だったけど、帯広からの飛行機代1万4,000円ですからね~
あなたには群馬産の1束198円のホウレン草あげますっ。
昼寝の権利

暑いですぅぅぅ。
しかし休みだから掃除せねばね…
あれ?

なんかピンク色のものが見えたんですけど??

な な… なんなんですか?! この10円ハゲみたいなものは~
えーっ なにしでかしたんだよ!まったく!!!
いや~… しかし塗り薬は舐めるだろうから塗れないし。
周りの毛を刈り込んでほっとくしかない。
いやはや、この暑いのに余計なことをしてくれて!まったく!
抑え込んでお尻の周りの毛の刈り込み。暑いですぅぅぅ。

そしてこっちもなんなんですか?!
また片耳だけ垂れ下がった安いスコティッシュホールド状態じゃないですか!

やっと耳の中からバラバラ黒いものを落とさないようになったと思ったら…
また掻きだしたね!!
抑え込んで綿棒で耳掃除。暑いですぅぅぅ。
猫どもも連日の猛暑で、ささいな傷が化膿しやすくなってるんだろう。
早く涼しくなってくれ~~~

そしてベランダでは今年何回目かの狂い咲きしてるし。
あー 水やらねば! カラッカラになってて軽いわ!
猫ケア、植物ケア、顔洗って洗濯、ざっと掃除機、ざっと水拭き、団子食べたのちに1階までゴミ捨て、チャッと洗いもの。汗だく。

ふと見れば、
昼寝してるよ。文庫本枕に。
稼ぎの心配のない奴はいいよねっ。
長生きしておくれっ!
時の流れ

ブクロにはところどころ、こういう建物がある。
バブリィな不動産屋が札束を積み上げても、けっして首を縦に振らずに
「この土地は売らん」と言い続けたおじさんがいた家である。
いや、おじさんかどうかは知らんが。
比喩的にねっ。

だから隣のビルはその家を避けて、直方体にできずに一部不自然な形となっている。
不動産屋もビルの持ち主も、この前を通るたびに
「チッ チッ」 と舌打ちしたに違いない。
ブクロのがんこオヤジタイプビルで一番顕著なのが西武デパートの左端にあるビルで、
かつては3階建てくらいの小さなビルだったが、西武が札束でバシバシひっ叩いても頑として応じなかったらしく、
ついに西武もそこを避けてビルを建てた結果、がんこオヤジビルの存在が全面に押し出される目の上のたんこぶ状態のけっこうみっともない有様となった。
そのビルはその後うどん屋になり、それからまた建て直して現在はスタバのコーヒーショップが入っていて景気良さそうである。

そういえば渋谷にも同じようなのがあったわね。
確かクジラ料理の店だったかな~ 多分ビルの窪みに今もあるんだろう。

キリン堂薬局もつい最近までは店を開けて細々営業していたんだけどね~
おじさんが亡くなっちゃったんだろうか。比喩的にねっ。
店を閉めてしまった。
さあ~ これからこの建物と土地は… どう変化するんでしょうかね。
だが今では西武資本も落ち目、そして札束振り回す不動産屋もいないだろう。

90度左を向くと…

宮城ふるさとプラザがある。
あ! ついでに揚げかま買っていこっと。

品揃えも完全に戻って、新鮮な野菜なんかもいろいろ置いてあった。
お客さんがたくさん入っているし、よかったよかった~

奥の牛たん屋さんも満席で、入り口に大勢並んで待っている。
みんなで、無理のない程度に、けれど忘れることなく、
これからも応援していこうね~
ゴーヤ大作戦

今年はゴーヤが大はやりである。
あっちでもこっちでもゴーヤを植えている。
それなり逞しかったり、あるいはやや萎びながらだったりしているが。
そしてほとんど日よけになっていないようなものも多い。

私はゴーヤなんて子供の頃は知らなかった。
ゴーヤの存在を初めて知ったのは沖縄に行った時だった。
私にとって<ゴーヤ>とは、赤面の思い出の植物である。

沖縄の友人の家を訪ねたのは、沖縄で海洋博があった翌年の夏だった。
着いた日の夕方、定食屋に入って豆腐と野菜の炒め物の中にあったゴーヤに、初めてお目にかかった。
定食屋のおじさんに
「どこから来たね?」と聞かれ「東京からです」
「あ~ 東京から来たの~」
しばらく話をしていたら
「沖縄、返還されて景気悪くなったのよ。ドルのほうが良かった。円なんかぜんぜん価値ないのよ」と言われ…
思わず顔が赤くなった。
ゴーヤがほろ苦かった。

友人が海に連れていってくれて潜ったら、海底が気持ちの悪い巨大なウニのようなもので埋め尽くされていた。
友人の友人が海辺の家に住んでいて、そこにも連れていってくれた。
友人の友人はイカのフライとゴーヤの揚げものを出してくれた。
「海はオニヒトデだらけになった。海洋博で海が汚れっぱなしだからね」と言われ…
イカのフライははおいしく、ゴーヤは苦かった。そして私は赤面した。

友人の彼女が訪ねてきた。
お土産に自家製のゴーヤジュースを持って。
友人と彼女は結婚したいのだが、沖縄では結婚式に両家の親族全員を招くしきたりがあり、
金がない彼らはいまだ結婚式を挙げることができない、と話した。
東京では一緒に暮らした2人だが、沖縄に帰ってからは別々に住んでいる。
なんとなくお互いの子供時代の話になり
友人は小学校で、沖縄の方言、つまりウチナンチュウの言葉をしゃべるとバチフダを下げられた、と言った。
<バチフダ>?

友人は淡々とした口調で感情をあらわさずに続けた。
「標準語でしゃべらないと<私は方言でしゃべりました>と書かれた<バチフダ>を首から下げられるのさ」
私は赤面を通り越し、顔から火が出る思いだった。
ゴーヤのジュースはひたすら苦く、苦く、苦かった。

あの時話した沖縄のみんな…どうしているだろう… 元気に過ごしているだろうか…
今年の東京は「ゴーヤ大作戦」でっせ~
痒さ
旅行から帰って玄関先で出迎えてくれた雄猫のいでたちがヘン。
あれ? なんかヘン?
片耳が垂れて、できそこないのスコティッシュホールド??
どーしたの、オマエ。
荷物置く間もなく耳の点検。
あらま! 耳たぶが赤く腫れて耳の付け根がややジュクジュク。
どうやらちょっと引っ掻いて傷をつけ、それがこの暑さで腫れて痒くなり掻きむしってしまったらしい。
うーん… なんと面倒なことをしでかしたのだ、キミは。
しかし、私はこの程度では6kg以上の猫を医者になんか連れていかんわよ。
まずハサミと眉毛バサミを使って耳の中の毛を刈り込む。
なんでこんなに毛だらけなんだ?まったく! バタバタ動くんじゃないよ!
刈った毛が奥のほうに落ちないように気を遣うわ~ 帰ってそうそう汗だく。
傷に毛が触れないようにして、オロナイン軟膏を薄く塗る。
あとは掻きむしらなければすぐに治るだろう。
エリザベスカラーなんぞ着けようもんならえらいことになるのは目に見えているので、
ここはなんとしてもこのままで治さないとね。
しかしやたら痒がって、すぐに後ろ脚を傷に近付けるのを抑えるのが大変!!
私は痒みに対してすっごく理解があるんですよ~
でね、これが始まったら抑えるだけじゃダメだってことが分かるので、
痒みを忘れるようなことをしてあげないと。
何かないかな~?オモチャで気を引いたりするけど役に立たず。
痒がったときにはどうするか… 格闘です!
ヤツも訳わかんないうちに突然抑え込まれて焦り、そのうちガブガブ噛みつきだして、
痛いから私もお尻をパシッとひっぱたいて暴れるのを再び抑え込むと、男の子らしく猛然と足蹴りかましてきて
あ? 私は何でこんなことやってるんだ?とか考えてる隙にまたガブッと噛まれたりして、
またお尻パシッとやったりして。
なんか双方かなり疲れ果て気が付くと静かになっていて、で、痒みを忘れるようです。
これを丸一日やってたのね~ いやはや。
翌日ふと気が付くと、ヤツが歩いたあとに黒いものがパラパラ。
ん?
カサブタだった。 歩くたびにパラパラ。 う~
まっ いっか。 こういうのが落ちていてもわたしゃ全然気にならないの。
ある程度のところで掃除機ジャーッとかければいいんだもん。
治ってなによりだよっ!
その治癒のスピードに、今更ながら驚くのであった。
地デジ

先日の休み、
裏のラブホの屋上は朝からやかましかった。
キーン キーーーン ガシガシ カンカンカン
キーーーーン
猫と
「まったく!何やってんだろね~ うるさいわね~」などと話していたら。

夕方にはアンテナがおったっていたの!!
あ~ なるほど!
時は7月23日。地デジ対応ギリギリセーフ!
しかしおっそろしくギリギリだね~
ラブホに地デジ対応テレビは必要か?
うーん… 砂の嵐しか見られないテレビでは、リピートしないかもね。

うちの下の木造アパートのアンテナは工事の気配もなかった。
このあいだ下を見たら、窓から洗濯物が干されているのを発見。
ああ、やっぱり住んでいるんだ…
ここに何人の中国の人たちが住んでいるか知らないが、
その人たちにとっては…

地デジなんか別世界の出来事なのかもしれない…。
選別と排除
「あら~ お久しぶりね。ヘアスタイル変わったわね?」
「おほほっ ちょっと気分変えようかと…」
ってね。
ホントは美容院行ってないので単に髪が伸びたってことで。
ずいぶん髪が伸びてきたな~ そろそろ美容院行かないとな~
などと思っていたらあの震災。ヘアカットどころじゃないわー!
その後しばらく髪の毛のこと、忘れてた。
ふと見れば、いやはや、こりゃさすがに限界かな~って思ったときに
三陸の海産物の一口オーナー募集を知ったの。
「内閣が首のすげ替えどうするかゴタラゴタラやっててちっとも復興が進みゃしない、
そんなの待っていられないから、みんなで助けてください!
復興した暁には、その証に牡蠣20個を届けます。」
牡蠣一口1万円のオーナー募集。皆さんもご存じでしょ?
そうか! 僅かなオカネでもこれなら私の自己満足じゃなくて、被災した人たちが本当に必要な物を買うオカネ、
漁具や網や船や港の整備、牡蠣の稚貝、関わる人々の人件費、そんなことに具体的に使ってもらえる!
ということで、オーナーになろうとしたらさ、
ここんとこの不況で私のオカネもないんだわね、猫の餌代も高いし。
どうするかな~ そのとき、ハタッ!と気付いた!
そうか、美容院行くのを止めてそっちに回せばいい!
髪の毛伸びても生活に支障ないわ!
で、順次ヘアスタイル変わっちまったのね~。
その次に<わかめ>のオーナーになったときには
エステ兼顔の骨のゆがみ矯正用のオカネを回したんざます。
その次の海産物オーナーには、肩コリのマッサージ代を回したんざます。
まあいずれも生活に支障ないものばかりでさ。
オーナーになる人は、牡蠣やワカメや海産物が目当てではない。
3年後、5年後に、「ありがとう、復興しました!」という葉書が届くだけでもいい!とみんな思っているのだ。
だけどもしそのとき牡蠣1個でも、わかめ一握りでも見ることができたら、
送るほうも涙、受け取るほうも涙、どんなにか嬉しいだろう。喜びもひとしおだろうと思う。
みんなその思いだけでオーナーになっているのさっ!
そして「メールが間に合わないくらいの申し込みがあり…」という嬉しい悲鳴のお知らせがあった。
けれど…
このシステムのバックグラウンドは、ネットに精通し口座を持ちカード決済をとり入れ、
セキュリティーもあり、ネットを通じてのお知らせやマスコミへの周知宣伝ができる運営会社しかできない、ということでもある。
そしてある意味早いもん勝ちで、その後雨後の筍のように同じような募集があっても、
果たして当初ほどの資金が集まるかどうか、たいへん難しいものがあるように思える。
どこかからは選別と排除の構造になっていくのだ。
私はどこを選ぼうか… どこかを選ぶ、ということは、どこかを排除する、ということである。
こんなことを思いつかないネットに不慣れな老人たちや、この集団から外れてしまう少数の集落の人々には、いつまでたっても恩恵が届かないこととなるであろうことを…
支援できる喜びの影には、そんな人たちが常にいることを、私たちはけして忘れてはならない。
しかし、矛盾は抱えつつも、何もしないより、何かやったほうがはるかにいい。
いまは、伸びてうざくなった髪を持ちあげつつ、そう自分を納得させているのである。
風物詩
なんだかあっという間に春が終わって、くそ暑い日になってしまった。
初夏というかすでに梅雨? 台風まで来てるし。やーね。
何日か前から少し窓を開けておくようになったのね。
ということは、うちではこの時季ならではの風物詩が展開されるんですよ。
ハエが飛んで入って来るのよ、10㎝ほど開けた窓から。
よりにもよって何であんな隙間から入る?おまけに出ていかないで部屋中をブンブン。
するとね、うちの雌猫はもうおばあちゃんだから、全然体動かさないのね、目だけ素早く動かして
ニャッニャッ! ニャッ!ニャッニャッ!ニャッニャッ! と小さく叫ぶ。
場合によっては声も出さず口だけ動かす。
「お前さんの運動は目と口だけかよ~」「ニャッニャッ!」
それに反して雄猫は激しく動き回って飛んでるハエを追い詰め、
時としてジャンプしながら前足をパンッ! と合わせてハエを叩くんですね~
いや、見ものよ!これ。
目の前を ドドドド~ ドドドド~ パンッ! ドドドド~ パンッ!
10回に1度くらいは、ハエ、落ちるものね!
まあ、肉球のパンッ だから、落ちてもまた飛んでっちゃうんだけど。
しかし2~3時間後に、プレスされてたいらになったハエの死骸が床にあったりするのです。
パンッ!で気絶して床に落ちたのを、心ゆくまでプレスするんでしょうか。
これが我が家の風物詩。
雨

怒号のような猛々しい風と、激しく大粒の雨が降った。
ああ… そういえばこんな天気のときもあるんだったな、と。
なぜか遠い追憶の風景を見ているような心地だった。

やがて雨が上がり窓を開けると、目の前で重くなった水滴が1滴また1滴と落ちていき、
その水滴の落ちる瞬間、なぜか電車の音が止まり車の音も止まり人の気配も、もちろん隣のラブホの気配もなく、ヘリコプターの音も救急車のサイレンもせず、目の前のものがすべて停止し無音の空間に放り込まれたような気分となり、落ちていく水滴を寂寂と見送った。
窓を閉めるときに、部屋の内側から閉めているのではなく部屋の外側で閉めているような感じに襲われ…
これはジュネの「手袋が裏返しになった」感覚のようなものかもね~
あったかい揚げかま
<コ・コ・宮城>にまた行ってきました。

あれからちょくちょく寄っているんですが、その後どんどん品物が入ってきて活況を呈しています。
喜ばしい限りです。本日は三陸のワカメがたくさん売られていました。
磯の香りが漂っています。
庶民はみんな応援しようとしてるんです。
政府の役人もモタモタせんと仮設住宅一刻も早く建てて
被災者全員にすぐに入ってもらえるようにしなさい!!

「5,000円寄付してくださ~い」って言われると
「ええっと… ちょっと今、無理かも…」ってなるときがあるけど、
ここでお買い物してお釣りの500円くらいを募金箱に入れることを10回繰り返せば、
5,000円寄付。
宮城の物産を買うことによって貢献もできるでしょ?
時々はそれに1,000円札足して募金箱に入れることもできるし。

その寄付は多分宮城の人のために使われるんじゃないかな~ という期待を込めてね。
だってねー!
再三思うけど、私の寄付は絶対に“復興なんとか委員”とか“復興なんとか団体”の給料に回してほしくないのっ!!

新鮮な葉物野菜も入っています。笹かまぼこも練り製品も豊富に並びました。
「高政」の揚げかまぼこも入荷してました~!
きっと工場も被災したんだろうに… 頑張ったね!!

袋の端をちょっと切ってそのまま電子レンジに。
アツアツの湯気の立ってるところにおいしいお醤油ひと垂らし。
この肉厚感がほどよいのね。
柔らかいんだけど噛むと独特のプリンプリンいう食感があって、生姜の香りがほんのり。
ハフハフしながら食べるのよ~。
おばさんは<100円マック>より<100円揚げかま>のほうが好きよ~!