三香温泉

(2009年12月23・24日 1人泊 @1泊目 7,500円 2泊目 6,700円)



三香温泉

屈斜路湖畔にあるこの小さな宿に行ってみたいと思っていたのだが、
あるとき宿を閉じることにした、とHPに書かれていて、

「ああ… 残念だけどご縁がなかったんだ」と思った。

そしたら「事情によりもうしばらく営業」 ということで、
大変大変!!  ちょっと遠いけど、この機会にぜひ行っておかなくちゃね!





三香温泉


釧路駅で釧網線を待つ間に入った駅の中のお蕎麦屋さんの<ゴボウ天蕎麦>。
1本ずつ揚げられたゴボウが一面に載っていた。

まん中に揚げた小さな海老がいて、かじったら卵いっぱいで驚いた。
体が温まり、安くておいしかった。えーっと、確か670円。

釧路は蕎麦屋がたくさんあって喜ばしい。最近はどこでも蕎麦屋を探すのに苦労する。




   三香温泉  三香温泉

前回、釧網線の1両の電車は背もたれが動かないことが分かったの。
進行方向と反対の席の観光客が背もたれを動かそうとしているのを見て
地元の人が「この電車、背もたれ動かないよ」と言っていた。

だから進行方向に向いた席に座る。乗客6人ほど。


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冬の北海道旅行は、いつも靴で迷う。

2~3日前に宿に電話して雪の様子を聞いたらご主人が
「5~6センチです。この辺はそれほど雪は積もらないので」とのことだったが、
雪が少なくても凍ったりしてるわけで、ということは靴が滑るのと足裏がすごく冷たくなるというである。


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実はわたしはアラスカでもOKという靴を持っているのだ!

しかしこれを履いて家を出ると、山手線内で足のほうに視線を感じるのね。

そして空港の荷物チェックのときに「靴を脱いでください」と言われたことがあるの。
(そのときは4~5人に1人くらいの割合で脱がせて調べていたけど… なぜに私が…)


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かつ北海道の人はその靴を見て、ほとんどみんな感心するのである…
(たぶんね~ 内心笑ってるのよね~)

でもその靴のすごくいいところはね! 
滑りにくく、かつ雪の上にずーっといても、ぜんぜん足が冷たくならないのよ。


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しかしたいして積もっていないようなので、大仰なその靴はやめて、普通のハイカーブーツにしたのであった。


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あ?  鶴の作り物?

…ではないようだった。首が動いてる。
本物である。

北海道の平原のまっただ中の喫茶店から外に出て、
カッコ~ カッコ~ という啼き声を聞き…

思わず「テープ?」などと聞いてしまう私なのです。

東京のスクランブル交差点ではそういう音を流しているんですのよ~。


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まあ私、そうとう人工物に侵されてますんでね。

摩周駅、午後3時半過ぎ。


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電話で「少し遅れますが必ずお迎えに行きますので」と言われていたので、
ゆっくりと改札を出ると
すでに迎えに来てくださっていた。

車に乗り込むと、低い太陽に照らされて茜色に染まった雲の色が、あっという間に夕暮れの暗さを帯びてきた。

冬至の北海道。


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お部屋は2階の12畳の広々したお部屋。
2面に窓がある。


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1人ではもったいないくらい広い。
お布団はすでに敷いてあった。

1階に簡易水洗トイレと洗面台がある。


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窓を開けると、飼われているハスキー犬の啼き声が聞こえる。

アウ アウゥ~ アウゥ~~  
アウ アウゥ~ 

お部屋は十分に暖かいが、補助暖房の石油ストーブもあり、夜も安心。






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ふろふろふろふろ~~~

内湯は館内にあるが、露天は外に。雪の中を少し歩いて。

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男女別の入り口を開けると、脱衣所には薪ストーブが燃えていてる。




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ドアを開けると…

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裸ですっごく寒いんだけど、ちょっとボーッと見とれてしまった。

誰もいない風呂から立ち上る湯気の揺らぎの向こうに、黒々とした木々が見える、
静かな広々とした露天だった。


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シンプルに3枡に仕切られた湯船は、源泉が投入される45~46℃くらいの熱い浴槽と、
その浴槽から調整された量のお湯が入っていく38~40℃くらいの湯船と、そこから流れていく34~36℃くらいのいちばん広くてぬるい湯船とがあり、
まず中間の温度の湯船で体をならしてからいちばん熱いお湯にキュッと入って、
そしていちばんぬるいお湯でほわ~っ ゆらゆら がなんとも気持ちよい。

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熱いの、ぬるいの、熱いの、ぬるいの、と果てしなく繰り返すのであった…

透明な単純泉であるが、かすかにゴムのようなにおい、そして口に含むと遠くに苦みを感じる、
フレッシュで力強いお湯だった。

独り占めできるなんて幸せである。





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月が出ていて明るく、静けさに満ちていた。




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窓からもれる灯りが心にしみいる北の大地の小さな宿。

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薪ストーブが燃えて、淹れたてのコーヒーが置かれ、ヤカンはシュンシュンと穏やかな音をたてていた。




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休憩スペースの先に別棟の食事処がある。

本日の宿泊は私のほかに年配の男性が1人、宿のご親戚のおばさまとそのお友達4人のグループ。

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ご飯とお茶はセルフサービス。
本日のお赤飯と茶碗蒸しは、ご親戚のおばさまが腕をふるわれたとのことで、
私まで親戚の家に遊びに来て晩ご飯に招かれたような気分にさせていただいた。

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       三香温泉  三香温泉

熱いアサリのお味噌汁と、ホコホコしたユリ根や栗、愛情も具もたくさん入った茶碗蒸し。

 

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お燗で<北の勝(かつ)>をいただく。
辛すぎないスッキリ系。





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大きなストーブの前でコーヒーをいただきながら、ご主人としばしおしゃべり。

ここで流れていった20年の歳月のなかでの、
出会いと、別れと、そしてまた新たな出会いは、
旅館業という<ビジネス>ではけして生まれないものであったろう。

この壁一面に飾られた写真は、過去の時間の断片のモザイクのようであった。


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これらの光景は私にとって初めて見るものなのに、なにか不思議な感情…

生き生きした今を生きているのに、過ぎた日の懐かしいものに再び出逢ったような、
失われたものをいつくしむような、温かでいながら一抹の寂しさを伴う、そんな感情を呼び起こされた。

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それはこの宿を手放そうと決心したご主人の想念が、
私の視線の中にひそかに入ってきていたのかもしれない。

たぶん多くの旅人たちはこの宿のお湯だけでなく、この宿のご夫婦に癒されにやってきたのだろう。

薪ストーブの台はタイルの装飾が施され、一部が欠けてしまってはいるがまだ輝きを失ってはおらず、
このタイルのストーブ台もまた、私にとって北海道でしか見ることがないもののひとつである。



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「星が見えてますよ」とご主人に言われて、あわてて外に。
迎えにきてもらった車の中で
「まだ北海道で星空を見たことがないんです」と話したことを覚えてくれていたのだ。

外に出てみると、月明かりと雲があって半分しか見られなかったが、
澄んだ空気の中に、またたく星々があった。

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見上げながら…

こんなに贅沢な時間を過ごしていいんだろうか、と。

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思った。


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そして露天の明かりも消してくれていたので、木々の間から光る星を眺めることができた。

その射るような星の光を見詰めてお湯につかっていると
ここはどこ? 私は誰? 状態となる。

脱衣所の薪ストーブの煙と匂い、夜空に上がっていくその煙と湯気が混じり合い、
見上げると頭上はるかかなたの、星辰。




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餌台にたくさんの小鳥たちがやってくる。
小さな生きものたちの気配を感じながらお湯に入っていると、とても幸せな気分になる。

なかには温泉を飲んでる鳥もいてびっくりした。温泉に入るかな~と期待したが、それはしなかった。



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そんなに寒くないし!  本日カヌーに乗るんだよ~ん!





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爽やかに冴え冴えと晴れた。
窓を開けると、下の犬小屋の前で丸くなっているハスキーちゃんが啼いている。

アウ アウ~ アウ~  パクパクッ アウゥ~~  パクパクッ

「パクパクッ」?ってなに? 静かな雪原はかすかな音も上にあがってきてよく聞こえる。

パクパクッ と同時にカッカッと歯が触れ合う音がして、どうやらアウアウ~と啼いたあとで、声を出さずに口だけパクパクさせているらしい。

ふ~ん… 遊んでる?

子供が1人でぐるぐる回ったりピョンピョン無意味に跳ねて遊ぶように、このこも退屈して遊んでいるんだろうか。
しばらく聞き入ってしまった。

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カヌーをさせてくれるロッジから、9時に迎えに来てくれて、ドライスーツという大変な代物を着させてもらい、ゴムの靴下、コートの上から救命胴着を装着、長靴、手袋、帽子で準備万端。

いやはや、大汗。しかし今までにカヌーから落ちた人はいないそうです。

でもって車で屈斜路湖畔に。

三香温泉

え~! 屈斜路湖って波があるの。ザブーン ザブーン と押し寄せてくるの。驚いたね~!

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そして屈斜路湖から釧路川に。やっぱり川幅が狭く水が澄んでいて、下流よりも格段にいい。

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鏡の間、とかいう有名な場所なんだそうな。たくさんの湧き水がさらさらと川に流れいっている。
釧路川はとても静かな川なので、このせせらぎのかすかな音が際立つ。

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水の中の鮮やかなグリーンは、クレソンだという。完全に水中にあるので、これもびっくりした。


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新鮮な湧き水がこんな状態を作り出しているのだろうか。水は思ったほど冷たくないのだ。

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お相撲さんのようにもっこもこに着込んで乗ってるでしょ。

証拠写真!


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あ~~! 楽しかった~~! もっと乗りたいけど、冬は1時間コースしかやっていないのだ。
また乗ろう!





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そして宿に帰れば温泉が待っている~!

内湯も適温でとてもゆったり落ち着ける。

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湯上がりの散歩。

宿の裏、湖に向かって歩いていたら、犬の足跡があったのでたどっていったら、
だんだん面白くなってきて…

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あ、ここで曲がった、とか、あらUターンしてる、とかやっているうちに湖の近くまで来てしまい、
しかし何もないので引き返す。

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小動物の足跡。尻尾の筋が雪の上にあった。






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本日クリスマスイブ、ケーキをいただきました~。







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夜の闇に張られた細い柔らかい繊維を湯気のすきまから手繰り寄せて、時を紡いでいるのか…

あるいはまた掌に載せた砂が指の間から落ちていくのを見つめているのか… その限りある砂を…

独りお湯の中で。





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ご飯!ご飯!

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元気!元気!


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あんまり仲良しではない。
餌台から追い出したり追い出されたりしている。






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こちらを見ながら、体と同じくらい幅広の尻尾を左右に何度も激しく振っている。

なんのサインなんだろうね?と思う。






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ときどき素早く地面に降りて、ヒマワリの種を地面に埋めているが…

2~3回雪を払って、ぐっと突っ込むだけで、おまけに覚えていないらしいし。

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それを鳥がほじくり返している。

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この宿に来ることができて…  間に合って…

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良かった、としみじみ思った。





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朝ハスキーちゃんにご挨拶。

「昨日はパクパクして遊んでいたの?」と聞いたら、
ドギマギしちゃったらしく
「え? えーっと… えーっと…」になってしまった。

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突然現れてそんなこと聞かれてもね~困るよね、確かに。





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              本日の宿 ガストホフぱぴりお のご主人が車で迎えにきてくださった。

           
             その車に乗りこむ私に、深々と頭を下げて見送ってくださるご主人の姿が

                               いまも心に残る。







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