(2009年9月2日 1人泊 @5,575円)
朝5時の新宿駅。
なんでこんなに早いかといえばですね~ それは函館までの安いチケットだからです。
しかしな~ 早すぎ。
朝4時に起きるためには前夜9時くらいに寝てなくちゃ……
無理無理! 当然徹夜となる。
そしてこの時間帯は高速もすいてるし、羽田までのリムジンバスだってあっという間に着いてしまうのだ。
8時半の函館駅は、ギラギラの日差し。
しかし、風が爽やか。
そうそう。
生温かい空気の塊が動くのではなく、風というものは、こんなにひんやりとしたものだったんだ!
あまりにも早朝すぎて、駅の観光案内さえ開いていない。
周辺を散歩。コーヒー飲みたいんだけど…
強烈な日差しにおののくわ。 大変!シミだらけになりそう!
駅前のデパートの中にある<無印良品>で
セールのサンバイザー購入。
(こんなとこまで来て、なんで<無印>買うはめに…)
ブラブラと散策。
そうこうしているうちに特急発車時刻も迫る。
おいしそうな、丸まるとしたイカがのっているお弁当購入。
この特急はお嬢3と落部の「銀婚湯」に行ったときに初めて乗ったのだ。
駒ケ岳を見やり、それからしばらくすると不意に海岸線が眼前に現れて、感動したのであった。
あれから時が流れ……
お嬢3の人生にも
いろいろと
変化があるのだ……
定刻に出発した電車は、
なぜか長万部駅に8分遅れで到着した。
乗り継ぎをどうするのかと思ったら、アナウンスがあって乗り継ぎの電車を待たせているみたい。
あれが待たせている電車です。
電車が行ってしまっても座っているおじさんがいて驚いた。
反対方向に乗る人かもね。
長万部駅前。
ここから1日7本しかないバスに乗って「クアプラザピリカ」というところに行く。
バスの運転手さんに行き先を告げると、国道からかなり入ったところにある施設の前まで
バスを迂回させて入ってくれる。
北海道で、バス1日7本走れば御の字である。
私が明日行く「見市温泉」は、八雲駅から朝8時台に1本、夕方17時台に1本の、計2本である。
当初こちらの「山の家」に2泊、「見市温泉」に1泊を考えたのだが、
2本のバスしかないのでは、夕食後に着いて朝食も食べずに帰ることになり、泣く泣く「見市温泉」2泊にしたのである。
「クアハウスピリカ」
第三セクターの経営らしい。ここから車で「山の家」に送ってもらう。
予定より早いバスで来たため、
30分ほどここで待つことになった。
車は山へ向かう1本道をうねうねと走り、歩くと気持ちよさげであったが
熊が現れるそうで危険。
20分ほどで到着!
本館。4部屋。トイレ、洗面台、食事処がある。
このほかに2棟のバンガローがあり、そちらはトイレがないが1人でも泊まれるらしい。
本日の私の部屋は、正面、入口の上である。
吹き抜けから下を見たところ。
絨毯敷き。6畳ほどか。
タオルや歯ブラシはないが、浴衣と羽織は備え付けてあった。
ポットにはお茶、蚊取り線香、カメムシ用ガムテープ、夜お風呂に行くための懐中電灯あり。
さっそくお布団敷いて、準備万端。
窓の外は、かすかに秋の気配の山々が広がる。
混浴の露天はこの部屋から半分見える。気をつけましょう。見えない部分が女湯口かも。
静かで、せせらぎの音だけ。
目を閉じると、雨音のよう。 あ、窓の桟にバッタが!
ふろふろふろふろ~~ るんるん!
日帰り入浴300円だそうである。
いいよね、まったく。
ドアを開けて……
私はこの湯船の前で、しばらく佇んでしまった。
なんと美しい風呂だろう…
お湯は静かに落ち、静かに溢れて流れていった。
打ちっぱなしのコンクリートと頑丈な丸太や木で作られた、味も素っ気もない風呂場だけれど、
お湯は神々しいまでに透明で、見つめていた私はなぜか涙が出てきた。
いままでそこそこの数の温泉に入ったが、こんなに美しく静寂なお湯と風呂場は初めてである。
38℃とのことであるが、私はもう少し低い温度でもいいくらいである。
<ピリカ>
アイヌ語で<美しい>という意味である。
このお湯の発見者とその次の代の方が、近辺で野菜を作り川魚を獲り、自給自足で宿を続けてこられたらしい。
しかし建物が老朽化して使えなくなり、町がこの施設を新築したとのことである。
単純泉のお湯はちょうどいい温度で優しく、時間がたつのを忘れる。
こんなお風呂に巡り合えたことが本当に嬉しく、心がうち震えた。
夜になると、きっと一晩中でも入っていたい思いに駆られるだろう。
1泊しかできないことが、とても悔やまれた。
この写真を見ると、いまでもなぜか胸が熱くなって涙が出てくる。
露天もあることを思い出し、ドアを開けて露天に。
混浴だが、目隠しの塀があり安心。しかし男湯ドア方向に湯口があるようで、
塀のあたりはお湯が停滞している。
塀からそっとのぞくと……
あーーー! 向こうからお湯が押し寄せてくる!
あそこが湯口?? 湯口ではなく、岩から溢れ出ていた!!
えーー!! あんなに豊富な湯量があそこから?!
うわあ、あそこに行きたい!!
本当の自然湧出なのだ!
こんなお風呂は初めて~~~~~!!
あそこに行きたい! あのお湯の上に立ってみたい!できればお尻も浸けてみたい!
それがだめなら手を入れてみた~い!!!
しかしあの部分は上からは丸見え、タオル巻きOKと書いてあったが、持参のバスタオルを使ってしまったら始末が悪い…
しかしフェイスタオルで前を隠してあそこに行き着いたとして、男湯のドアが開いたらすっ飛んで塀の内側に来たくても…
このゴロゴロの石に足を取られ、片手で胸のタオルを押さえ片手にはカメラを持ち、挙句の果てにツルリン、バッタンと倒れて「大丈夫ですかー?!」とか言われてフェイスタオルじゃ前面隠し切れないからとんでもなく赤面…
……だけですめばいいが、打ちどころ悪く捻挫、もっと悪く骨折… でもって裸にタオル掛けられて救急車……
あ”ーー!! ダメよ!それは絶対ダメ!! 分別盛りのおばさんがやってはいけないことよ!
早朝なんかいいでしょうね、あのお湯の量…
わかったわ。いまは諦めるけど、体に巻くもの持って必ず帰ってきます!!このお風呂!!!
川に流れていくお湯も半端な量ではなく、この宿は秋の終わりには閉鎖されてしまうけど、
あのお湯は冬中流れ続けているのだろう。
あまり利用されないみたいで、バーベキューの炉の周りの椅子には、
キノコがいっぱいはえていた。
夕食は1階の食事処で6時から。
すでにセットされている。お味噌汁を持ってきてくれて
鍋に火を入れてくれた。
ご飯、お茶などは自分で。
脂がのった鮭やお刺身もあり、ご飯のお米の味もおいしく、
安い料金なのに思いがけない感じであった。
冷めてはいたが、大きなマイタケ?らしき天ぷら、そしてヤマメのカラアゲのお味がとてもよかった。
「日本酒1合できればお燗で」とお願いしたら
チンッと音がしてすぐ持ってきてくれました。
昼間は女性の従業員の方もいるんですが、朝、夜は男性1人で切り盛りしてるみたいです。
鍋だと思ったらジンギスカンだった。
それも皿の上に肉が大山盛り…で。
ちょっと苦手なので中の野菜をかき集めて焼いて食べたけど
モヤシ、ナス、キャベツ、ピーマンなどが甘みがあっておいしくいただけた。
肉は大部分残しましたが、まずいわけじゃなくて、私はあまり食べないだけです。
あんなにボリューミィだったら、若い人も嬉しいのでは、と思った。
まだ北海道で体験できないこと、
それは満天の星空を見ること。
それと地吹雪をお部屋で見ること(外で味わいたくはないの)。
この日も星は見えなかった。
でも、いつかは見るわよ~!
朝の露天。
ううううう~ん… 欲求不満。あそこに行きたい!
じっと我慢。
もう1泊したかったな…
気がつくと、風呂に向かって、深くこうべをたれていた。
8時に朝ご飯。
交代要員の人が来て、違うおじさんがお給仕してくれた。
これから露天のお湯を抜いてブラシで2時間かけてお掃除するんだそうな。
「日が当たると半日で藻が生えちゃうんだよ」
お湯が流れていないところは昨日も小石の上にかなり藻が付いていたが、こうやって毎日お掃除されていることが分かると安心である。
第三セクター運営で、1人でかなりの部分を切り盛りしているご様子、大変ですよね…
母体のクアプラザピリカの電話の応対や従業員の方たちも気持ちよく、そしてたぐいまれなこのお風呂に入りに、私はまた絶対に来るわよ!と心にかたく誓ったのであった。
ホッケも、添えてある山ワサビにお味噌が入っている感じのものも、とってもおいしかった。
いままであまりおいしいと思わなかったものは、じつはまずいものを食べていたらしい。
私同様1人で来ていた北海道在住のおじさまと、同じく北海道在住の青年とお知り合いになりました。
で、帰る前に宿の上の遊歩道を3人で散歩。
根が腐ったのか、裂けた痕も生々しい大木。
このまま放っておけば、強い生命力でひこばえや木の一部が再生するのかもしれない。
しかしここは管理されているから、この木は切られてその一生を終わるのだろう。
人間の時間で何年、この木は生きたのだろうか?
裂けた木の香りを感じながら、私もこの木の下をくぐった。
振り返るとかなり急峻な道なのである。
その後ゆるやかに下っていって、一回りして再び宿に戻る。
植物図鑑で見たことのある植物。
ちっちゃなコクワガタの雌。
これで成虫だそうである。
昨夜お知り合いになった青年が、帰り途を迂回して「見市温泉」まで車で送ってくださるのである。
夕方5時過ぎのバスまで、八雲でどうやって過ごしたらいいのか途方に暮れていた私は
(えい!タクシーたぶん10,000円で、行っちゃうかー! しかしな~… )
この申し出はすごくありがたいのだけれど、どの程度の負担になるのか見当がつかなかった。
しかしそばでおじさまが「ああ、送ってもらえ、送ってもらえ!」と言ってるし…
というわけでお言葉に甘えました~! ありがと~!
八雲駅すぐそばに、名水があるんだそうで。
水、出っぱなし… そしておいしい!
北海道はどこでも水がうまいんです。蛇口ひねれば。
そういう水飲んでる人たちが、わざわざ「うまい水」だといって汲みに来るんですよね~。
なーにが<試される大地>だ!
青年と、おじさまと、
水と、太陽と風と、そして感動的な温泉に感謝しつつ、
私は次の温泉に。
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