(2011年1月9日 1人泊 素泊まり @4,800円)
結局眠れなかった…
朝6時過ぎの新宿駅はまだ暗い。
こんな早朝の便は乗りたくないんだけど、格安航空券を取るために電話でやり取りしてたらこんなふうになってしまった。
これで旅先の一日をすごすのは、ちょっとつらいものがある。
帯広便はビジネスの利用が多いらしく、平日が混んでいたり、帯広市内のビジネスホテルがいっぱいになったりする。
私は年末徹夜仕事で消耗し、かつ仕事以外でもなんだか気分的に消沈し、
正月そうそうも早々と仕事モードとなり…
こんな年明けでいいんだろうか… と。
だからとても心待ちにしていたのだ、この旅を。
なにはともあれ、年だけはとるわね。
半分朦朧とした目の下に、朝日に輝く山々が! おはよ~う! 北海道!
これは…
ああ 襟裳岬
帯広空港は晴天、そして-12℃の爽やかでキーンとした空気だった。
寒いとは感じず、この風のないシャープな気温が心地よい。
バスは30分ほどで市内へ入る。
道路に雪は積もっておらず、路肩に凍った雪の塊がとけずにある。
現在11時。
本日の宿は、チェックインが3時半なので…
えーっと…
これから4時間半、どうしましょ。
とりあえず<六花亭>ね。
デザートを食べるため頼んだピザは3分の1残す。じゃないと入らないので。
本日ミニチョコレートパフェにしてみました。
相変わらず女性グループや親子連れで賑わってます。
と、突然3人の店員さんがあるテーブルの前に立ち、
「Happy Birthday to you ~ ♪♪」
と歌い出したのね。
小さな女の子の前にロウソクが立ったショートケーキが置いてあり、
これを注文するとサービスで歌ってくれるようです。
若いおねえさんたちの、素直で澄んだ歌声が響き、終わると店にいたみんなで拍手。
きっと少女にとっていい思い出の誕生日になったことでしょう。
この日は誕生日が多かったらしく、このあともう1回歌のサービス。なんだかじんわりと温かい気持ち。
で、私はというと、外は寒いから歩きまわるのは無理。
いったん駅に戻り、スマートフォンで駅周辺の温泉を検索。
こういうときスマートフォンって便利よ~
歩いて10分ほどのところにある「たぬきの里」っていうお風呂屋さんがモール泉かけ流し、とわかり
じゃ、そこに行ってみるかね~
歩道はところどころ凍っていて、滑らないように必死でヨチヨチ歩いている私を、
東京とあまり変わらない服装、スカート姿の女の子がトットと追い越していく。
道もスマートフォンのGoogle Map で見ながら来たからすぐにわかった。
マンションの2階に入り口があった。
受付に人がおらず、洗濯機が回っているランドリーコーナー、灰皿が置いてあるソファがあって、
これなら上がってから休めるな、助かった。
すごくいろいろある入浴券販売機だったのでしばし見とれるが、420円の料金にシャンプーやらタオルやら付いた価格や、回数券もあるわけ。
420円の券を買って振り返ったら、さっきまでいなかったおばさんがフロントに立っていて驚く。
「階段降りてください」とのこと。
中は、昼過ぎでも3~4人入っていた。
お湯はカランからもモスグリーンの温泉がジャンジャン出て、5~6人入れる浴槽は豊かにかけ流し。
熱め適温のお湯がザブザブ、さすが帯広!
寝ていないので少々頭痛がして鬱々たる気分だったのだが、弛緩した体とともに徐々に持ち直す。
窓がないので風呂場はミスト状態。とても温まり汗だくとなる。
なっんてったって外気との温度差、50℃ですからね~
上がって汗が引かず困ったが、ソファでタバコすってのんびり汗を拭く。
ここから一気に-12℃の道を歩くんだから、しっかり態勢整えないとね。
からだはホッコホコで全然寒くないが、少し風が吹くと手と顔がものすごく冷たい。
真っ白に凍りついた木。見たことがないような状態で陽だまりの中に立っている。
本日成人の日の催しがあるようで、振袖姿のお嬢さんがこの脇の道を連れだって歩いてるんですよ!
帯広では、木もお嬢さんも逞しいわ~
さてすでに3時近くなったので、駅前のスーパー「長崎屋」で晩ご飯調達してタクシーに乗りましょうかね。
素泊まりの宿なんです。
この前帯広に来た時「長崎屋」で買い物して、おおむねどんなところにどんな物を売っているか分かったから、手っ取り早く弁当コーナーに向かう。
「長崎屋」で売ってる弁当はふつーのスーパーの弁当なの。食指動かず。
併設した「さざえ」って店で売ってる弁当も、ハンバーグとか海老フライとか天丼・カツ丼、稲荷寿司に海苔巻きってかんじで、幕の内弁当みたいのは売ってないんだよね。
帯広駅で売っているのは<豚丼>だし。
豚しか入っていない弁当って侘しい。ゆえに<豚丼>食べる気しないの。
結局ホタテご飯に小さな海老フライ、ポテトサラダと煮物が入った弁当にしました。
そして1個売りしていたミカンと、前回カボチャの煮物がわりとおいしかったので、カボチャ。
これでいいわ!
予約の時、駅からバスはあるか聞いたら
「タクシーで来てください」 つまりバスがあっても本数がちょー少ないってことか。
そんなに遠くはないと思うが、往復のタクシー、宿代より足が出るんじゃないだろか…
と、ちょっと心配になりましたが、まあ、ここは北海道だからね。
10分ほどで上り坂となり、木立の下に帯広の街が見えた。
1,650円くらい。帯広のタクシー、初乗り530円だから。これなら許容ね。
降ろしてくれたところのドアが開きませ~ん!
横長の建物。
あっ あそこにも入り口がある!
駐車場には車がたくさん止まってる。
あ、こっちのドアですね。ちゃんと開いた。
カウンターにいた女性がすぐに応対してくれて、前金で4,800円払い、鍵を貰う。
お風呂は夜11時半まで。朝は6時から。8時からお掃除で入れずとのこと。
ここは日帰りがメインなので、ひっきりなしに人が出入りしている。
説明を受けていたら、女性の隣に浅黒い外国人の男性が。
ご主人らしきこの人、歩き出した私に流暢な日本語で
「ゴユクリ オクツロギクダサイ」
「は~い、ありがとございま~す」
廊下に沿って風呂の入り口の前を通り、突き当たりのドアを開けて階段を3~4段降りて、
ノレンをくぐって宿泊棟に。
この名前なら、お湯が悪いわけないわよ!
小さな流しに電子レンジあり。男女別のトイレはきれいなシャワートイレ。
改築したばかりのようで、建物全体が新しい。
その分、宿代に反映されたようで、
数年前は3,800円だった宿泊代は4,800円になった。
突き当たりは住居らしい。例の「ゴユクリ~」の人が行き来していた。
スリッパは履かないスタイル。
踏み込み、3畳の畳の部屋、小さな冷蔵庫、電気ケトル、バス&フェイスタオル、パックのシャンプー&リンス、歯ブラシなどあり。
浴衣、羽織り等もあり。
6畳和室。空調の音はしないが、暖房が効いていてとても暖か。
小さいテレビ。その向こうの障子を開けると…
オットマン付きの椅子。ここに補助暖房用のストーブがあったが、全然必要ない暖かさ。
しかし部屋の使い勝手はとっても悪くて、椅子に座ってオットマンに足を載せ寛ごうにもテーブルがないので飲み物は床に置くしかなく、布団を敷いた部屋でご飯は食べられず入り口の部屋のテーブルで壁を見ながら食べることとなり、お茶を淹れてテレビでも見るか、というときには敷いてある布団の上で、ということに相成る。
つまり1泊素泊まりが限度、ということか。
この障子を開けると、表に駐車している車はさっきより増えている。
ティーバッグのお茶を飲んでからお風呂に。
いや~~~ すっごい人の数!
人が多くても、カランもたくさんあり、広々と開放感がある風呂場なので気にはならない。
2カ所の浴槽のお湯の量も質もとてもよく、
そして小さめの浴槽の源泉の温度はかなり低めなので家族連れ、幼い子供たちもたくさんいて、
久しぶりに私の生まれた下町の、昔の銭湯の情景を思い出した。
たいへんな盛況ぶり、写真は撮れず。
丘の下に広がる暮れていく街の情景がとても美しく、かろうじて大きなガラス窓の向こうを写す。
夜11時過ぎに風呂に行くと、まだ3人ぐらい人がいて…
多分ギリギリ11時半まで入ってるんだろうな~
わたしゃ明日の朝に期待。
薬飲んで寝たので、頭痛も取れた。
7時に行ってみると
ほら~~~~!
朝焼けの素晴らしい景色!
独り占めのお風呂!
よく澄んだ空気で、遠く遠くまで見渡せる!
お湯は豊富に縁から溢れ溢れていき…
惜しげもなく流れ去っていき…
手で堰止めようとすると、方向を変えて流れ落ちていくのだった…
たった1人なのにこんなに吹き上がって…
昨日の夜、部屋に置いてあったパックのシャンプーとリンスを使って髪を洗ったのだ。
頭にお湯をかけるたびにふっと硫黄の香りが、そう、お湯をかけるたびに硫黄のかおりが鼻をくすぐり、
なんとも幸せなシャンプーの時間だった。
薄茶色のモール泉なのに、ほわほわと柔らかな硫黄の香り漂う、素敵なお湯である。
小さいほうの浴槽も景気良くお湯が投入されボコボコと音が。
すぐに体中に細かい泡が付き、時々体をコロコロと駆け上がってくる。
アルカリのつるつる感とともに、その泡のつるつるも心地よく、
おまけに私にはちょうどよいぬるさで、いつまでも入っていられるのだった。
だけどね…
7時半くらいから男湯でお掃除の音が。
そしてこちらでは従業員のおねーさんのブラシの音が響きだし…
うーん… 労働してる姿を見ながら風呂三昧ってのもねえ。
ちょっとね。
やっぱり早々上がりました。
でも、いいお湯を独り占めできて、満足です。
10時前に呼んでもらったタクシーが来たので受付に。
大女将さんなんだろうか、おばあちゃんが
「コーヒー淹れたから飲んでいきなさい」
コーヒー戴きながら、しばしおしゃべり。
「どこから来たの?」
「東京から」
「あら~!東京から?! こんなところまでよくきてくれましたね~」
柳月のバームクーヘンの切り落としご馳走してくれた。
「50年前からここにいて、30年前からこの宿をやってるの」
その間にも車の音がして、客がどんどんやってくる。
「お金、ここに置くよ」とか「2人分、置いとくよ」とか言いながら。
みんなお馴染さんなんだろう。
地元に愛されてるんだな~ ここのお風呂。
「どうもありがとね」というおばあちゃんとお別れして、私はタクシーに乗った。
「30年続けてるの」という言葉を胸の中で反芻しながら。
タクシーの運転手さんは
「帯広は、十勝川に行かなくても、掘ればどこでも温泉が出てくるよ」
そして温泉は出てくるけど、景気がすごく悪いそうな。
私は年末からの鈍重感がなくなって、
あの青空のように、なんだかとっても冴え冴えと晴れやかな気分であった。
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