theoria(テオーリア) まるみの 湯気の向こうに 見えるものを心の眼差しで観想する 小さな旅へのいざない

春めくラブホ

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再開発

ラブホな人々

東京生まれの人間でも、新宿はともかく、ブクロは苦手な人がすごく多い。
人によっては、たとえば小林信彦なんかは、池袋について憎悪感さえ漂わせて書いたりしている。
現東京都知事は池袋に関してちょっと前にかなり差別的な発言をしてた。

浅草生まれの私にとっても、10代のころブクロの映画館に行くのはある意味勇気が要った。

いま住んでみると、池袋というのは不思議な地域で、終戦後のドサクサのまま建物がどんどん建ちなんとなくなりゆきで時が経ってしまったようなところだと思った。

そうとう昔に巣鴨プリズンの跡地がサンシャインビルになってからは、新宿なんかに比べて再開発が忘れ去られたみたい。

ちょっと前から豊島区はそのことに気づいたみたいで、最近あちこち掘り返して再開発しだしたのである。

ラブホな人々

私がブクロに引っ越してかなり驚いたのは、ラブホ街のはずれの暗がりに夜な夜なおねーさんが立つことであった。
もちろんおねーさんが立っているのは珍しい風景ではなく、新大久保の裏の通称<廃人通り>のマンションに住んでいる人を訪ねると、夜道にコロンビアーナたちがたくさん立っていてけっこう賑やかに嬌声をあげている姿なんかを目にしたが…

それと全然違うのね、
クラシック。


なんといいましょうか… タバコふかして立ってるその立ち方が、終戦直後(私は戦後生まれよ!)の雰囲気を醸し出しているのね。
マキノ雅弘監督「肉体の門」みたいな。

かなり若づくりの年増のおねーさんが1人、そして髪を茶色く染めて肩のあたりで内巻きにカールさせている細いおにーさん(もちろんスカート穿いてる)が1人いたの。

ラブホ街で仕事があるんだろうか。
あったんでしょうね、きっと。需要と供給の世界だもんね。

私は夜あんまり度々会うから挨拶しようかな、どうしようかな…
挨拶するってのも、どうなんでしょね、でも毎日会うしな~

などと思っているうちに、いつも立ってる暗がりのあたりで工事が始まっていなくなっちゃったんだけど。

ラブホな人々

今頃どこでどうしてるのかな~ あの2人。元気で暮らしていてほしいものだ。


東武デパ地下で鶏肉買ったら、人込みで疲れて、もう西武の本屋まで行けない…
挫折。

帰ってネットでアマゾン、クリッククリックするかね~
あーあ… 疲れた! 初めからそうすればよかったんだ…







森の新緑

ラブホな人々

あっ! <池袋の森>にも春が来た!

ラブホな人々

アスファルトじゃない、土の上を歩けるのは嬉しい。ほんのちょっとだけど。

ラブホな人々

植物ってすごいよね~ こんなところでも、季節を忘れずに生きている。

ベニバナトチノキですって。園芸用にかけ合わせてつくられた種だそうです。

ラブホな人々

新芽がきれいね~~ 

ううー  どっか行きたくなっちゃう…








ブクロなお花見

ラブホな人々

冷たい風が止んだからちょっと外に出る気になったので、お花見するかね~ 例のところよ~。 
えきネットで予約した新幹線の切符も取ってこなくちゃ。

あ、けっこう咲いてますね~ しかし寒い!

ラブホな人々

葉桜になっちゃっているのもある。
連日の気温の乱高下で、桜だってどう咲いていいのか分からないらしい。

「今夜はみんなでここでカラオケだよ!」という声が聞こえた。

ラブホな人々

あ~ 家のないおじさんたちが集まってお酒飲んでる。
でも今日は寒いんじゃない? 風邪ひくよ~
ほら、猫も「寒いニャンニャンニャン!」って脇をすっ飛んで行ったわよ。

ラブホな人々

女の子が2人、桜を見上げながら
「……ならお父さんにやってもらえば?」
「無理無理無理無理無理!!」

いろんな花見があるねえ…

ブクロ。







火事?!

ラブホな人々

なーんか調子悪い… 寒気がするし… まだ風邪なのかな…
鼻かみながら、そろそろ12時だからテレビのニュースでも、と思ってふと窓を見たら…


ええっ? なに、この煙は! 
窓の外が見えないくらいの煙であった。
いくらなんでもラブホの風呂の湯気じゃない!

窓を開けて下を見ると、隣の木造アパートの2階の屋根に近い部分、空気抜き管のあたりからモクモクと煙が出て風でこっちに上がってくる。

これは… もしかして火事? それとも… 魚を焼く煙?
魚の煙にしてはおかしい。換気扇からでも窓からでもなく、おまけにこの木造アパートはずっと人けがないのだ。


しばらく様子を見ていると煙は収まるかに見えたが、なんと!今度はかなり離れた管からも激しく出てきた。天井が延焼してる?
今日が日曜なので大家兼管理人がいないことに気づき、私はちょっと当惑した。
煙は出続ける… 古い木造アパート…

消防に通報すべきか、しかし魚だったらかなり迷惑な誤報である。
悩んだ末110番にかけた。

「110番です。事件ですか?事故ですか?」
事件でもなく事故でもないのでそう伝え、隣から煙が出ているが何の煙か私には判断がつかず、火事かもしれず、できれば消防車を呼ぶ前に警官に調べてもらえないだろうか?
そうしたら「いま向かわせます。お名前とご住所、生年月日を」
生年月日? 何で? 言いたくないが仕方ない。

1階で待っていたら直ちに無線片手に自転車に乗ったお巡りさんがやって来た。
事情を話しながら裏手の木造アパートに向かう。
煙はほぼ収まっていた。しかし
「あ!あそこからまだ出てるな…」と言いつつお巡りさんは狭い路地を点検。
戻ってきて「お名前と生年月日と電話番号を」
また生年月日? そして携帯の番号を告げる。
この時点でウーウーいいながらミニ消防車みたいのがやってきた。
えーっ?  私、消防車は呼んでないよ!

とりあえず後はお巡りさんにお任せして部屋に戻る。


そして下をのぞくと4~5人の消防服の人がアパートの側面を回り出し点検していた。
煙は収まったようであった。何だったんだ?


そして私の家の固定電話が鳴った。
「消防です。火事ではありませんでした。状況を伺えますか?」
で、下に行ってミニ消防車のそばにいたおじさんに説明。
その手に握られた紙には、プリントアウトされた名前と電話番号らしきものが。

「何の煙だったのですか?」
「魚です」

「魚?!」 やっぱり…であるが、しかしなにより驚いたのは
「あそこに人が住んでいるのですか?」って聞いたら
「住んでました」ということだったのだ! あの廃墟みたいな木造アパートに。

なんやかやのやり取りの後で
「お名前と生年月日、ご職業を」
また生年月日? 今度は職業?

翌日一応大家兼管理人にこのことを話しに行くと
奥さんが「あ、通報してくださったんですね」
は? ここにもう伝わっている……
ご主人が「あそこは、ちょっと問題があって…」

窓も閉め切り洗濯物も外に干さず、もはや誰も住んでいないように見えた部屋には、じつは中国の人たちが住んでいるとのことであった。
おまけに何人住んでいるのか、その実態も分からないらしい。


私が名前のほかにたびたび生年月日を聞かれたのは、おそらく私は生年月日と名前とでコード化されているからであろう。

消防士が持っていた紙には、私の住むマンションの住人のデータが載っていたはずだ。知らせていない固定電話にかかってきたんだからね。
あの紙、シュレッダーにかけて廃棄してよね!!

管理されていて一瞬であちこちに連動して判明するナンバー付きの私の存在と、何人いるかさえ不明の木造アパートの住人たち…

なんだか大変奇妙な、ちょっと不愉快に近い気分であった。


願わくば、お昼に油の多い魚を焼いたがために、そこに住む中国人たちが思いもよらぬ事態に…… 

なりませんようにと、祈る……








ブクロの桜

ラブホな人々

東京で<桜の開花宣言>ですって!!

ブクロの桜はさっ こうやって見るのよ~

ラブホな人々

線路の向こうに白いものが見えるかな?  あ!見えた見えた!!

あれよ、あれ! 
いちばん白いのはたぶんハナミズキだけど、その隣のちょっと白っぽいのは桜だね~ 
今年も咲いてきたわね~

ラブホな人々

ふむふむ。もうちょっとしたら橋を渡って花見に行くかね~

と、窓際で見とれてたら…  ギャッ!いてっ!

うちのデブ猫に足踏まれた!








ゼブラなお尻

ラブホな人々

いつも買う煙草屋でタバコ1カートン買っていたら、店の脇に女の子がデカバッグ抱えてヤンキー座りして向こうを向いて携帯で電話してた。
白と黒のゼブラ柄の多分タイツのようなものをパンツのように穿いている。少々透けているので私にはタイツのように見える。
「だからぁー! そんときはそれでいいよ! ×××だけん! いいよ!」

なんかちょっとなまりがあるのかな? 
もりもりしたお尻の生地が引っ張られていて、そこだけ柄がとても伸びている。なんとなく見るともなく見ながらタバコを頼み、袋に入れてくれるのを待つ。

ここのタバコ屋にはときどき高校生くらいの男の子が店番してて、この子は左手の爪だけ黒くマニキュアしたりしててさ、私がチラッと見たりすると、私のブルーのラメ入りマニキュアをチラッと意識したりするんだよね~  なんというかね~  仲間意識?

この日はこの少年じゃなくて愛想のいいおじさんだったんだけど、ライター1個袋に入れてくれて、おつり貰って歩き出そうとしたときに、もりもりお尻のお嬢ちゃんがガバッと立ち上がって
「もういい!もういいよ! かーちゃんの好きにしな!」って叫んで携帯パカッと閉じてくるっとこっちを向いたので、私とぶつかりそうになったの。

「ああっ! すみません!」っていう語調は標準語でした。

去っていくそのお尻の歩きっぷりが、ホントにゼブラでさ~

もりっ もりっ もりっ もりっ もりっ 

このタイツ作った人もきっと本望だろう。

そう… ゼブラちゃんの電話の向こうには… 喧嘩できるかーちゃんがいるのだ。







沈丁花…

ラブホな人々

あ?! 沈丁花の香り?

やっぱり!! こんなに咲いている、朝のラブホ通勤街。
この辺、ときどき強烈なシャンプーの香りなんかが漂っていて、まぎらわしいの。

ラブホな人々

春だね~~~ 

白くこんなに満開に咲いていて、すがすがしい。
… 明るいうちはね。


ラブホな人々

え、夜?

夜はね~ ほとんどピカピカに埋もれてて見えないから香りだけね。
そして誰も見ないね。

でも毎年咲くのよ。このホテルの人が世話してるんでしょうね。

春だね~~~





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