栃木 奥鬼怒温泉 加仁湯







東北関東大震災から、2週間がたった。



私は自分の行ってきた温泉の思い出やそのとき感じたことなど、時間がたってもありありと思い出し、
いままではそれを書き綴ることができたが、いま加仁湯の写真を見て、これが10年前に行った写真のような錯覚を覚える。

加仁湯に関しての感想などとても書けない自分がここにいて、しかしそれは紛れもない真実であるのだから、いまの私の心情を書き綴るしかないようだ。



加仁湯に関しての情報を知りたい方はどうぞ他のサイトで得てください。
冬の雪景色といいお湯を求めて行った、その思いを満たしてくれたお湯だった。
いつか感じたことなどを書ける日が来たら、書いていきたいとは思う。




自分の降りた駅や歩いた道の変わり果てた映像がテレビにふいに現れると、そのあまりの変貌に、
声を失う。

北海道・奥ピリカ温泉で知り合い、交通が不便な次の温泉地まで車で送ってくれた青年は
去年結婚して函館からかつての鉄鋼の町、釜石に転勤になったとメールがきた。

地震の翌日、Google の航空写真で彼の勤める建物を探すと…
窓から魚釣りができるくらい海のそばに写っていた。
釜石の被災の状況を目にするたびに不安がどんどんとつのっていく。

どうぞどうぞ生きていてほしい! 

未来ある若い命。新婚でこれから家族が増えて、幸せな家庭ができていくはずの…
都内でも混乱しているような状況では安否の確認の方法さえなく、
ごく浅い知り合いなのにこれほど不安に苛まれるのか、と日々が暗く塞がった。

震災から8日目にメールが来て無事だと分かったときには、正直膝の力が抜けた。

いまもって肉親の消息が分からない方たちの心の痛みはどれほどであろうかと、想像するだに、つらい。





今日は都内では北風が強く、被災地の気温も低い。
窓から外を眺めると、日差しはあるが電線が揺れ、物がきしむ音がする。
不安で落ち着かない日であった。

水道から検出されたヨウ素の値は下がったが、乳児を抱えた母親の不安はぬぐい去れない。福島では何重にもわたる苦しみの被災者が増える。
原発の事故は依然として終息する気配はなく、東京電力の下請け、関電工の被爆した人たちの状態も気になる。
なによりいまだ大部分を公表しない東京電力のここに至っても続く隠蔽体質、そして「免責にはあてはまらないのではないか」と、できれば補償もすべて東京電力に向けようとしている政府にもうんざりするが、
しかし40年前に原発を造った政府を選んだのは国民であり、いまの及び腰の政府を選んだのもまた国民であることを思えば、これらの教訓を生かして、幼い子供たちのために、人災である原発事故など二度とおきない国になってほしいと願う。






なにもできない私は、とりあえず義援金を送るしかないが、
私が送るその金は、いま寒さに震えている人に、あるいは満足に食事できない人に、あるいは老人を病院に運ぶガソリン代に、と思うからであって、できることなら自分で手渡したい。
復興のためと称する外郭団体の天下りの役員の給料に使われるんじゃないかと危惧するのは、大きな金が動くときには必ず善意と裏腹の力が働くという現実があるからだ。

震災直後に、円は急騰した。
なぜ?! と思い、そして、ああ… そうか。と思った。金儲けを狙う人間には被災も戦争も関係ない。
被災地で消防団と町の人が家庭用の金庫を瓦礫と汚泥の下から探し出し、保管する作業をしていた。
「あきらかにこの町の人間じゃないのが、あさっているんだ。だから自分たちで保管してやらないと」

こんなときに! そんな人間が!
悲しいけれどそれが現実だということを、目の当たりにする。





しかしそんなことを忘れさせてくれるような真の善意も思いやりもたくさんあって、
被災地の人々がしだいに復興と希望を語り、そこに笑顔が見られるようになってきたのだから、

私もまたできる限りのことを、やっていこうと思う。

東北の遅い春は、もう、そこまで来ている。




新幹線に乗ると、東京で桜が散ってしまっていても、白石から仙台、そして盛岡、山々や街の中に満開の桜が美しく咲いていた。

あの風景が再び見られる日を心待ちにしながら。








(2010年2月19日 1人泊 @12,750円)




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