(2011年7月1日 1人泊 @10,650円)
勝手に封印していた秋田・青森解禁!
なんで封印してたかっていうと、そりゃJRの新幹線が高いからですわ!
見境いなくフラフラ行っちゃって、カードの請求見て目が落ちないようにね、
永年封印し続けていたんですのよ。
だけどもう200km以上の距離は3割引きだもんね~
これからはせっせと北東北に行けるわよ~ん。
おまけに今回は例のお得な<大休>パスなんざます!
あ、JR東日本以外の方のために説明すると、JR東日本が年寄りのためにオフシーズンに新幹線6回乗車くらいも含めて、地域・期間限定で乗り放題的に割り引いてくれる<大人の休日パス>ってのがあるんですのよ。
白石蔵王を過ぎたあたりから、屋根の上にブルーシートを敷いてある家屋が目立つようになる。
震災の被害で、あまりにたくさんの家がまだ修理できずにいるのだろう。
震災直後に無残な映像が流れて息を飲んだ仙台駅構内も、一部を残してほぼ以前通りに修復されていた。
車窓の向こう、仙台市内からしばらくの間、屋根のブルーシートの数は驚くほどであった。
ブルーシート… いつごろからこの和製英語が使われだしたのだろう?
安価で丈夫、大きさも大小さまざま、用途も幅広く使われるこのシート。
英語でTarpaulin タープ とよばれるシートが日本で広まった過程で、自然と調和し青空になじむということでブルーという色が選ばれ生産されたのだという。
このシートはいまや工事現場、犯罪現場、崖崩れや土砂災害や河川の氾濫の応急処置の覆い、火災現場、畑の脇の肥料の雨除け、そしてたくさんのホームレスの人たちの必需品となっている。
そしてもちろん震災の後の壊れた屋根の覆いにも。
この<自然の風景になじむブルーシート>を人々が目にする時、
それはどんなふうに映るだろうか。
土砂崩れは当座覆われているが、そのうち役所で本格工事を発注するのだろう。
火災現場の跡はきっと更地になり、やがて建物が建つんだろう。
ホームレスの人たちは日々をブルーシートでしのいでいるから、今日明日に死んだりはしないだろう。
たくさんの屋根を覆うシートは、暫く雨風をしのぎそのうち大工さんが修理するんじゃなかろうか。
かつて、危険、危機は緊急だった。赤や黄の色がそれを現していた。
明らかに誰の目をも引き付け、注意を喚起した。
それは即刻何とかしなくては!という緊急の色だった。
いまやブルーシートが象徴するものは、緩慢な危機である。
この自然になじむ青いシートは、まるで癌細胞のように目立たずジワジワと日常に浸透していく。
「あのシートで覆っておけばたぶん今日は大丈夫だ… 今日大丈夫なら明日も大丈夫じゃないだろうか…」
青空色の、なんと危険なシートであることよ…
秋田は米どころ、水田が青々していた。
新幹線・田沢湖駅では老人たちがリュックを背負って行列を作って降り、
わりとしっかりした足取りだったり、ややヨタヨタしたり様々であるが、どやどやと一斉に出口を目指した。
私もその中の1人である。
乳頭温泉行きのバスはいっぱいで、私は補助椅子を使う羽目となった。
温泉に向かうバスのこういう光景は、記憶する限り相当珍しい。
もっとも停留所ごとに降りて行く人がいて、田沢湖でドドッと降りてしまうと車内の人数はかなり減ってきた。
私の隣に座った女性に、乳頭温泉郷の温泉は歩いて全部回れるかと聞かれ、
彼女が大きなカートを持ち、ヒールの靴だったのでちょっと当惑した。
私のおぼろげな印象だと歩いてすべて回るには数時間はかかるんじゃないか?というものだったのだが、
私も初めてなので半端なことは言えず、だれか知っていそうな人に聞いてくださいと答えた。
そのおばさんは歩いて前まで行きバスの運転手さんに尋ねていた。
「テレビでやった鶴の湯に入りんですが…」
「鶴の湯?! もう間に合わないよ、あそこの日帰りは午後3時まで(現在2時45分)だからさ。 午後はいつも芋洗い状態だから明日の午前中行ったらいいんじゃない? 湯めぐりバスが出てるよ」
彼女は何とかこまくさ、とかいう宿でカートを引っ張りながら降りていった。
芋洗い… こわ~!
終点で降りたのは私を含めて5人ほどだった。
ふっ と、硫黄のかおりがした。
蟹場温泉はこの道の突き当り、5分も歩かない距離にある。
2泊しようと思ったら明日の土曜は満室だそうである。
雨上がりの湿ってひんやりした空気が、6月からの猛暑でくたびれた体に優しかった。
バスで一緒だった中年のカップルも前を歩いていたので、この宿に泊まることが分かった。
入り口を入ってすぐのフロントで記帳し鍵を貰い、風呂と食事の説明を受ける。
2階。 トイレ、洗面は外、冷蔵庫あり。
廊下部分に割と座りやすい籐椅子とオットマンがある、シンプルな部屋だった。
窓からの眺めは、この部屋あたりが一番よくないんだろう。
この際窓からの景色はどうでもよろし。
ろてんろてんろてん~ こんよくろてん~
まだあまり人がいなさそうだから、身支度してタオルと湯浴み着ひっつかんで一目散に!
ろてんろてんろてん~
きゃあ~~~ あああ~~~
ドキドキドキドキ いいわね! 誰もいないといいな~
きゃあ~ きゃっ きゃっ きゃっ~ いいね~ して、誰もおらぬ!
一応念のため湯浴み着装着。
ちょっと熱め。ふわっと硫黄のかおり。
まあ、あの階段から来るんだから来たらサッと着ればいいか、とも思ったが、
風呂があまりに良いので、これは気を抜いてボーッとする可能性あり、と踏んだのね。
お湯はすごく綺麗な透明のお湯で、肌あたりからすると中性。
ひんやりした風に乗ってかおる硫黄のかおりも、ブナの林の香ばしい匂いも、
なんだかとろけてしまいそうになる素敵なお風呂だった。
前を流れる小川のせせらぎと落ちるお湯の音、
たまに聞こえる鳥の声を聞きながら、
虫もほとんどおらず、のぼせるのを防ぐために時々岩に腰掛けてさまし、
お湯に入ったり出たりとしていると、時間の経つのを忘れてしまう。
いいねえ 蟹場温泉。
おじさんが1人降りて来たのだが、ふと気づけばUターンして帰っていくので
「入ってもいいですよ~湯浴着を着てますから」と言おうかと思ったんだけど、
すでに階段をかなり上っているのででかい声で叫ぶことになり、
そんな… はしたない… 一緒に入りたいわけでもないし… などと思っていたら見えなくなってしまった。
気を遣っていただきありがとうございま~す!
緑の季節もいいけれど、今度はぜひ雪のシーズンにまた来たいと思う。
一休みの後、内湯に。
冬は閉められるだろう窓は、この時季は大きく開いて風が爽やかに通り抜けていく。
女性専用露天。夜の混浴露天が女性の時間になるときには男性用となる。
混浴には劣る。お湯、熱い!
岩風呂。小さい。
もとからある木風呂入り口。
おお~ すごくいい感じの木風呂。
お湯がなみなみと溢れて。
だけどここのお湯も熱い!
入ってくる人がみんな
「うわ! 熱いー!」
湯口のそばに水の蛇口があるが、全開しても焼け石に水…
お湯には大きく薄くて白い湯の花が舞う。
「熱い!」「熱い!」と言いながらも、入ってしまえばその熱さが心地良い。
ただし残念だけど長時間は無理。
木風呂湯小屋外観。
夕食は1階広間で。
手前、魚介と野菜のマリネのようなもの。
向こうはお馴染岩魚さん。
鴨肉はたいへん柔らか。
白いものはホイップした生クリームをメレンゲと混ぜたみたいな、甘みのあるデザートみたいなもの。
真ん中も干し柿を羊羹状のものと合わせたような甘いもの。
鍋は薄いみそ仕立ての、うどん、キノコ類、野菜が入ったもので、ほとんど味噌の味を感じなかった。
ご飯とお澄まし。
お澄ましの薄めのお味もよく、小粒のジュンサイのプツプツが、なんかとってもおいしかった。
夜7時半から9時くらいまで女性時間となる混浴露天。
下駄箱にぬいだスリッパが10足くらいあって、前を行くグループも賑やか。
風呂の見えるところまで行ってみると、結構な混雑ぶりで…
やっぱりあの風呂は独り占めしなくっちゃね~
木風呂に行ってみよう。
案の定、誰もいなかった。
落ち着ける、とてもいい風呂で、これでぬるめだったら理想なんだけど。
もしくはぬるい風呂がもう1カ所あるといいんだけど。
でも、広々した木の床が温かな造りの、印象深い風呂だった。
さっと切り上げて上がる。
汗がさらりと出ていく。湯上がりが心地よい。
ろてんろてんろてん~~~
どうやらまた独り占めみたい。
顔がほころんでしまった!
空気が目覚め、体がゆるゆると目覚めていく。
こんな幸せな一日の始まりを味わえない大勢の人たちのことを思うと、申し訳なく思える。
静かな朝の光。お湯の温かさ。
木々の若い緑。
立ちのぼる湯気。
どうか一刻でも早く、当たり前に幸せな日常の朝を迎えることができますよう…
少しでも多くの人たちが…
いま私の感じているささやかなしあわせが、特権的なことではありませんよう…
誰ひとり来る人はおらず、混浴露天<唐子の湯>独占満喫満足感謝感謝、であった。
しんしんと降る雪の中の、このお風呂の熱めのお湯を想像して、うっとりしたのであった。
朝食も昨夜と同じ場所で。
登山の人も多いようで、昨夜「朝は5時半に出ますからフロントに鍵を置いておきます」などと言っている人もいた。
8時に行くと、私は最後。もはや大部分が食べ終わって食べている人は1人だけ。
2本目の岩魚の今度は甘露煮、ゼンマイ、姫竹、納豆など。
食後コーヒーのサービスがあった。
チェックアウト前に、自販機の瓶の牛乳を飲んだ。
瓶なので何となく北海道の駒ケ岳牛乳や山川牛乳の印象が強かったのだろう、
飲んだ瞬間、そのあまりの味の薄さにびっくりしてしまった。
(まさか水で割ってないでしょうね…森永牛乳… などと)
10時にチェックアウトしてバス停前までゆっくり歩く。
よく晴れてすごく暑くなってきた。
高温泉の湯めぐりなどする気はまったくないので、とりあえず本日の宿に向かって歩くか。
チェックインまでの時間をどうするかは、それから考えよう。
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