群馬 広河原温泉 5月の峰

(2012年5月5日 1人泊 @8,400円 )






群馬 広河原温泉 5月の峰





左の膝が痛くなった。
階段を下りるときに痛い。

しばらくすると治ったが、
今度は左の股関節が痛くなった!





群馬 広河原温泉 5月の峰

医者に行くほどじゃないんだけど。
行ったってどうせ「加齢です」と言われるだけだろうしね~

ひどくならないうちに、予防医学。
温泉です!

「連休中で泊まれそうな日はありますか?」と電話で聞くと若女将が
「4日以降なら大丈夫ですよ」
「では5日に1泊、露天のない部屋でいいです」







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その時若女将が
「2泊でなくて1泊ですね?」
(あれ? なんでこんなことを聞くのかな?)
「ええ」
「あの…… 露天付きの部屋もあいていますが……」
「? 稼ぎが悪いので、お風呂なしの部屋でいいんですよ」

と答えたものの、どうしたんだろう。
若女将のためらっているような、言い出しかねているような、気配を感じたのだが。



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車でバス停まで迎えに来てくれた若女将の口から
「今日はちょっととんでもないことになっていて。
こんなことなかったんですが、本日女性客が8人いらっしゃって……
ちょっと騒がしいかもしれません。すみません」

(あ?! たぶん彼女は電話口でそれをなんとか伝えようとして、あのような言い回しになったのだろう)



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「そうですか。いろいろあります。大丈夫ですよ」

期せずして春爛漫の風景が目の前に広がっていて、嬉しい。









群馬 広河原温泉 5月の峰





風呂には先客が1人いたが、
その後彼女の友人らが次々と入ってきて、
小さな風呂は6人入って満杯となり、おしゃべりもわんわんと響き、
女3人寄ればなんとやら、で、後から1人来た人がどこに入ればいいか途方に暮れているので
私が上がって空いたスペースに
「ここ、ここにお入りください」と指さして風呂場を後にした。


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里山の梅と同時に桜が咲き、新緑がすがすがしく、穏やかで暖かい一日。
季節の移ろいの中の貴重な偶然の一瞬。

読書をしようかとも思ったが、散歩しないなんてもったいない。




群馬 広河原温泉 5月の峰

歩いていると汗ばむ。

連休中の激しい雨でダムからの放流の量が増えて水かさの増した川は、
ゴウゴウと音高く流れている。

去年の夏浜屋に泊まった時に、親猿、子猿とりどりの群れが、ほとんど流れのない川床の岩の上を
何十匹も川上に向かって行進していった情景を思い出した。












群馬 広河原温泉 5月の峰

浜屋の前の橋を渡り、この先の一本道を上るのはもう何度もやっているので、
引き返して峰の対岸の今まで歩いたことのない道を歩いてみよう。









群馬 広河原温泉 5月の峰

さすがに雪は消えているが、やっと芽吹いたばかり、細い枝のおずおずとしたごく浅い緑や、
十分に日差しを浴びてやけに素直に伸びている新芽の茂り、
自分の視界に入ってくる風景の中で、躍動しているたくさんの生命の存在に圧倒される。

なんだか目に養分を与えてもらっているような気がする。
目だけでなく、細胞のすみずみのクリーンアップをしてもらっているような気分になる。




群馬 広河原温泉 5月の峰





峰に行く道の橋を渡らず、そのまま初めての道を歩いてみる。

先日私は北海道の道南の宿で、大きな衝撃を受けた。
漢字3文字のその本のタイトルは、私の心の中に重く沈み、
しばらく憂鬱に近いようなアンニュイな気分に追い込まれてしまった。


群馬 広河原温泉 5月の峰

そんな状態の時、家での風呂上がり、濡れた髪の毛にタオルを当てながらテレビをつけたら
数学の話をしていた。

<やさしい数学>みたいな感じの。

「リトルの行列の法則、というのがあるんです。
……で、わかりますか? 店の行列の自分の前にいる人数を数えて、自分の後ろに1分間で何人並んだかを数え、前に並んだ人数を後ろに並んだ人数で割る、すると何分後に店に入れるかわかります。検証してみましょう」

実際に3軒くらいの店の行列で人数を数えてやっていた。
「ほら、だいたい合っているでしょう?」
うん、合ってる。





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店のおねーさんはやたら動いているが全然手際がよくない六花亭。
私の前に6人が椅子に座って待っている。よくある風景ね。
私も椅子に座る。5分後に2人やってきて私の後に座る。
この場合、15分待つ。
うん、そうね、そんな感じかな。

デパ地下で。
大阪のイカ焼き限定出店。
20人並んでるが、私の後には1分間で4人並んだ。
5分待てば買えるわけね。

ふむふむ。待つことの予測がたてば、待ってもいいかな~ってなることもある。




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へえ~ なんだって? リトルの法則っていうの?


長時間平均化した顧客数Lは、
長時間平均化した到着率λ、
長時間平均化した顧客が系に費やす時間Wの積に等しい

L=λW

この法則は、例外も特殊性もない。って。

ソフトウエア開発の性能テストにおいても、<試験環境がボトルネックを生じていないことを保証するために用いられる>という。

人間の行列だけじゃなくて、
0と1がボトルネックで団子にならないような、スムーズに整然と流れていくイメージなんかが浮かんできて、
おまけに
英語で Little's law って、すごく可愛い。

数学に携わる人がよく口にする
「美しい」数式とか「エレガントな」定理とかいう表現を、長年どう捉えていいかわからなかったが、
この3つの記号は見つめていると、なにも排除せずきわめてオープンで、温かで、そして輝いて見えた。




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3つの漢字に憔悴し、3つの記号に救われたような気がした。




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そういえば私にとって数学との出合いは全然幸福なものではなかったのだ。

その後もカオスだのフラクタルだのポアンカレ予想だの、ゲーデル エッシャー バッハ だのって、いろいろあるわね、あらよいよ~い!だったのであった。

新鮮な驚きと安らぎを感じさせてくれた記号の向こうに見える<数>の世界を、
この分野をもう一度見直してみようか。










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<落石注意>と標識がある先を進んでいくと、落石がある。
まあ、危ないってほどではないが。
この先はどこに行くのだろう。


無限と……  ん?

『無限と連続』 遠山啓 ……
確か読んだ気がするが。
岩波新書の、表紙が見え、「無限と連続」という文字が見え、
遠山 啓 という文字も見え、頭の中でページをめくり、

めくると……

何もない。
白紙。



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確かに読んだはずなのに!

いくら思い出そうとしても ……白紙。

あーあ  遠山先生、すみませーん。
というか~ 私があの本を読んだ時間は、いったいなんだったんでしょうか~

また読まなければならないようです。





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発電をしているのだろうか、小さなダムの水が滔々と落ちている。

道はまだまだ続いているが、引き返したほうが無難かもしれない。
人間が通る気配はまったくない。



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日は高く明るいけれど、空には夕暮れの気配があった。

腕時計の気圧計を見ると急激に気圧が下がってきていて、明日はひと雨あるかもしれない。








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風が吹くと、どこからきたのだろうか、ふんわりと白い花びらが風に舞って目の前を通っていく。
遠い谷川連峰の山には、まだ白く雪が積もる。

気が付けば股関節は痛くないし。
つまりは、えーっと、運動不足だったってことか。






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雲が晴れてゆくと、強烈な日差しのひと刷毛が、梢の先の先までの新芽の形を鮮やかに際立たせる。





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宿に戻ると、この宿を建てた時に植えられたのであろうか、しだれ桜の大木が迎えてくれる。



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しだれ桜でも木によって少し印象が違うのは……

八重桜と




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一重桜との違いだった。






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筍も順調に出ていることだろう。







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いつもの食事処の、いつもの夕食である。

風呂場でラウドスピーカーのように喋りまくっていたお嬢さんが席につき
「え? これだけ? まだ出てくるの? え? これだけ? ホントにこれだけ?」と
叫んでいる。 




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本日もシシ鍋。



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山椒の新芽を口に運びそのむせかえる強烈な香りにせき込みそうになりながら、
山に遅い春が来たんだなあ、と思う。



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前回はフキノトウだったが、今回はフキになっていた。
これもまたおいしい春の恵みだった。




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そしてニジマスのフライ。

これだけ?
これだけである。

私はたいへんおいしくいただいた。








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性能の悪いステレオ2台でAM放送とFM放送を同時に流されているような風呂場の状況だったから、
だれもいなさそうな時間、つまり食直後に風呂場に直行。

独り占めで1時間ほどたゆたった。

もっとも最近は周りの雑音がひどくても、幽体離脱して鹿の谷の露天に入りに行けるようになってるのね、私。
仕事中にこれをやると仕事内容がひどくなるから気をつけてるけど。

風呂場の前の八重桜はまだ蕾だった。









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夜の散歩の、桜の花の向こう、満月がおぼろ。





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風呂場でもそうだったが、隣の部屋では深夜2時過ぎまで途切れることなく喋りまくり、
女のおしゃべりってすごい!と思った。

いつぞや菫クンとお散歩しておしゃべりしながら何時間か過ごしたが、
もちろんしゃべる時間としゃべらない時間があるわけで、
それでも私はちょっと声が嗄れ、菫クンは「久しぶりに人と話したから口が疲れた」と言ったものである。












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いつもの朝ご飯。







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浜屋から引かれてくるお湯の管。




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若女将は私よりずっと若いから、そして
「お湯はいいので、宿を続けていきたいんですよね」と言ってくれたから……

私はちょっと安心しているのだ。



       

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帰り際
「あの…… うるさくなかったですか?」と聞かれ

風呂場の状況を思い出し
「すごかったですよ~」と笑いながら答えてしまった。

「すみません、めったにないことで。この次は静かに過ごせるかと」

いいんですよ~ いろんなことがありますから。












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ゴミかと思ったら。



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気の早いトンボだった。











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つまり体も心も、運動不足は良くないということですね。




       














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