(2008年8月17日・18日 @円)
お盆休みはそろそろ終わるが、まだまだ世の中はざわついている。
でももういてもたってもいられなくなって宿に電話したら、
囲炉裏付きの少々高いお部屋なら空いているとのこと。
「1人でも泊まれるんですか?」と尋ねると
「もちろんです。高くなってしまいますが」
高くなることに関してはもう割り切っている。
「お願いします」
上越新幹線、浦佐駅からバスに乗り、大湯まで。
大湯バス停まで宿からの送迎がある。
大湯から車で20分ほどか。
途中からは、宿に向かうためだけの道となる。
どこもかしこも蚊帳でぐるぐる巻き。玄関を入るとき2重の蚊帳をくぐって入る。
自家発電とランプの併用。
テレビはない。
2階の角部屋。眺めがよい。
すでにお布団が敷かれていた。
囲炉裏のそばには、炭が用意されていて、夜になって冷えてきたら、
きっと嬉しいことだろう。
すっきりシンプル、居心地良さそう。
混浴露天の様子を見に。
サンダルに履き替えていくスタイル。
スリッパがないということは!
念のために体に巻く布も持っていく。
石段を下る。
湯小屋。
ここも蚊帳でグルグル巻き。
入り口と脱衣所は男女別。
手前、加温の浴槽。手を入れてみるとちょうどいい温度。
向こう、源泉かけ流しのぬるいお風呂。そんなに大きくない。
この大きさで混浴となると、う~ん、見ず知らずはちょっと厳しいな。
源泉・かけ流しのほうに入ろうとして、脇のほうにバケツが置いてあるのが目に入った。
風呂場にバケツ?
風呂場には、必要なものしか置いていないものである。
なぜバケツ?
しばらく眺めていて、入り方が分かった!
このお湯は人肌のお湯に長時間浸かってから、熱々の沸かしたお湯の浴槽に入るのだ。
沸かしたお湯の浴槽は冷めていて熱々ではないから、バケツを使ってぬるいお湯をせっせとかき出し、
熱いお湯を入れるのだ。と。
使ってみると、これはやっぱりバケツでなければならないことが分かった。
そしてセッセコとかき出し、蛇口をひねって熱いお湯を出し、なかなか溜まらないからその間、
ゆるゆると人肌のお湯につかる。
お~お、さすがケロリン!
すごい勢いでお湯が溢れ流れ出ていくにもかかわらず、微動だにしない!
毎分2トンの湧出量だそうである。
ゴージャス!
お湯の温度といい量といい、とてもいいのだが…
いかんせん目の前の佐梨川の音と盛大な湯音でたいへんやかましい。
これでもうちょっと落ち着けたら理想的なんだけど。
人がくるかもしれないし、切り上げる。
女湯。ここも沸かしたお湯の湯船と、源泉の浴槽があり、
バケツがあった。
しばらくすると子ども連れの若いお母さんが入ってきて、子供にはプールとなった。
私が出ると、飛び込みが始まったようである。はしゃいでいる。
ザッブ~ン バッシャ~ン
「泳いじゃいけないよ」などと言われているのが聞こえる。
いいじゃん。だれもいないんだし。
そういえば島根・熊谷旅館のぬるい貸し切り風呂にも、子連れが長時間入っていたわね~
子どもにとっては、ぬるいお湯はプール代わりだよね。
玄関。
ガラス戸の向こうに蚊帳2枚。
周囲を散歩。
林道もありちょっと歩いてみたかったが、直ちにアブが飛んできて刺されそうになったので引き返す。
駒ケ岳。
夕食は食事処で。
新潟の、この地方の伝統的な漆器の、組みのお膳と器。
漆器は塩素に弱いがここは水がとても良いので、漆器が長持ちする、と
女将さんが料理と器について説明してくださる。
私は年間、何本の岩魚を食べているのだろうか…
しかし、席に着いたのを見計らって運んでくれるこの岩魚を食べたときに、
冷めないようにとあぶりすぎて皮がやや硬くなっていたけれど、
その身をかじった瞬間熱さと塩の味の向こうに、岩魚という魚を私はいま初めて食べたのだ、と感じた。
それは目の覚めるような味わいで、このような強烈な経験をさせてくれたこの宿に感謝したのだった。
野采の煮物の、その大ぶりの1つずつの中に、素朴で充実したおいしさがあった。
ぜんまいの味も、シイタケの味も。お麩にも濃すぎないうまみがしみこんでいて。
しばらく前に「この宿は食事に肉が出てこない」みたいな書かれ方をしていたのを見たが、
そんなこともあってか、信頼できる生産者がつくった鶏のささ身の刺身や牛肉のユッケが出た。
おいしかったが、私は肉のないお膳で充分である。
山菜の天ぷらは揚げたてをそのつど運んでくれる。
なによりも、かつて新潟の家庭に必ずあったという朱の漆の器たちは、
軽く、温かく、やわらかく丸く、手に取っているだけで嬉しくなってくるのだ。
この宿のご主人は新潟の家々の蔵を回り、今は使われなくなったこれらの器とお膳を集められたそうである。
昂じて、古物商の免許も取られたとか。
こんないい器が蔵の中で朽ちていってしまうのは、なんとも悲しい。
お正月、お節句、婚礼……
おじいちゃんを祝い、おばあちゃんを祝い、
ときに孫を祝い、家族で、あるいは近所の人たちと、これらの器たちは庶民の幸せの時間をまとっている。
そしていま私の手の中で、ふっくらと炊かれた白いコシヒカリを美しく輝かせた。
よかったね、こんなふうに使ってもらって。
組みのお膳も見せていただいた。
昭和初期からいままで、たくさんの笑顔を見てきたであろう漆塗りのお膳。
宿のスタッフの1人のおばあちゃん、おん年90歳の方が作ってくれたちまき。
部屋に持って帰っていただくことに。
几帳面に、丁寧に巻かれた笹の葉を取ると、
それはランプの明かりのもとで、キラキラと光ったのだった。
夜が更けていくと、ランプともうひとつの電力の明かりがたいへん明るく感じられる。
炭をおこしてその温かさを楽しむ。けっこう冷えてくるのでちょうどいい。
ときどき窓を開けると網戸越しの冷気も心地よい。
川音と、ややモーター音が聞こえる。
夏の山の宿の夜。
湯気の立つ朝げ。
日帰りの湯小屋に。
混浴の風呂にはまだ誰もいなかった。
女湯のほうから行くことができる。
沸かしたお湯の浴槽には木のふたが。 壮観。
えっらい勢いで噴き上がっている。
見ている分にはおもしろいが、ぜんぜん落ち着かないので隣の小さな女湯のほうへ。
浴槽は小さいが湯量はここも豊富で、ジャグジーどころではない。
朝10時に、地元の人らしいおばさんが日帰り入浴で入ってきた。
朝の10時だよ~! いいよね~!
本館、貸切の2カ所の露天。
空いていれば中から鍵をかけて好きなだけいられる。
上の大きいほうの露天はテラス付き。
ここも蚊帳でグルグル巻き。
徹底している。
上にかけてあるシートが赤いので、全体に赤く見える。
大きくてお湯はもちろん豊富。
もちろんバケツもあり、沸かしたお湯の浴槽からセッセとかき出して後、熱いお湯を出しておいてから、ぬるいお風呂に入る。
時間制限がないのがとってもいい~
溢れたお湯と排水は、豪快に流れていく。
下の貸切露天はテラスはないが、川により近く、グルグル巻きの蚊帳が取れたら気持のよい景色が眺められるのではなかろうか。
ここも、手前の沸かしたお湯をバケツでジャカジャカと捨ててから蛇口をひねって熱いお湯を出す。
そして向こうの源泉のほうに入る。
お湯はとんでもなく溢れて、ヤッバ~イ!危なく桶を流すところだった。
宿で聞いたら、よく流しちゃう人がいるとのこと。
流されるとそのまま川に流れていってしまうようである。
やっぱ、どっちんとしたケロリンじゃないとね。
湯口からのお湯の量は、ここもすごい。
無色透明のとても綺麗なお湯で、2カ所の浴槽に交互に入っているといつまでもいられて、
1人占めのお風呂でゆったりとした時を過ごせた。
湯口から遠いところでじっとしていると、細かい泡の付くお湯。
蚊帳が取れたら眺めはとてもいいだろう。。
ぬる湯は暑い時季よりも、気温が下がってからのほうが、私は好きである。
むしろほのかに温かなお湯は、地面から湧き出している恵みであることを実感できる。
厳重に蚊帳で防御しているのに、なぜか入っちゃうのだ。。
風呂場にも脱衣所にも、そして廊下には2mおきに殺虫剤。
3mおきくらいにカメムシ取り用のガムテープが置いてある。
洗面台。水のみ。トイレは水洗。
自然の中に人間が侵入しているのだ。1匹や2匹入り込んでも文句は言えない。
水がきれいだからこそアブがいて、手つかずの山が深いから多くの昆虫や他の生物も生息できる。
夕ご飯の献立は、昨夜とすべて変えてくれた。
大きく輪切りにされた棒ダラは柔らかくもどされ、なんとも懐かしい味付けだった。
本日は新潟地酒5種類の、利き酒セットをお願いした。
利き酒セットってすごく好きなの。
5種類の味を楽しめるなんて、いいじゃな~い?
酒飲みはここから気に入ったのを注文するのでしょうが、私はこれで終わってしまう。
本日は鮎。
ちょっと残念だったのは、鮎も保温のため遠火であぶられ皮が硬くなり、、
昨夜の岩魚はそれに負けない強さがあったけれど、
鮎はやや繊細な魚なので、その皮のごわつきがおいしさを損ねていたことだった。
この宿は岩魚ね!
イカ、里芋、大根の煮物。
おいしい漬物もたっぷりあり、甘酸っぱい赤カブもあった。
<霧の塔>純米酒、気に入りました。
純米酒が好きなのね。なんかその蔵元のポリシーが分かるんですよ。
吟醸系は飲みやすくて華やかでおいしい!と思ってもすぐにあきちゃうんです。
ぶっちょう面してそっぽ向いているようなオヤジが、じつは人見知りでシャイであったかくてすごくいい人、みたいな感じかな。
おいしい新潟 でした。 ごちそうさま。
晩秋… 11月この宿が閉まる直前、いつかまた訪れてみたいと思った。
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